僕の職場で席替えがありました。
正確には先週の金曜の夕方に席替えを行ったのですが、「花金だぜ!」とかなんとか死語を垂れ流しながら職場を飛び出したので新しい席に落ち着いて座るのは今日が初めてでした。
移動した席はフロアの丁度、ド真ん中に位置する席でした。ここでちょっと想像してみてください。真ん中ってことはですよ、もしもフロアが折り紙だったとしたら、折ったときに丁度折り目になる位置です。なんでフロアを折り紙に例えたのかと言うと今からこうして謝るためにです。ごめんなさい。
席替えってのは、慣れきってしまってマンネリ気味の景色を変える事により新鮮な空気に入れ替え、周りとの親交を幅広いものにし、仕事への活力を生み出すために行うためにあるものと思われます。
席替えをすることにより劇的に仕事の効率があがることは考え難いことですが、毎日同じ会社へ行き、同じ椅子に腰掛け、同じ仕事をするデスクワーカーにとっては気持ちをリフレッシュする効果は得られるように思います。"エブリディ"が"繰り返し"を意味することと捕らえがちな僕らに対してのちょっとしたスパイスになる。
僕はコイケさんのことが好きでした。それは小学校2年生の時の席替えでのことでした。
僕らのクラスでは頻繁に席替えが行われていた。恒例の席替えは少し変わった方法で行われていた。先に班長を決めるのだ。立候補制だったんだけど、立候補者が足りない場合は担任が班長を任命するシステムだった。
その年代の少年・少女で自己主張が出来るような子供などいるはずもなく立候補者はいつも足りない状態だった。小学生の低学年なんてオランウータンが少し賢くなったようなもんだから誰が班長をやってもそう大差ない。そう言った理由でチンパンジーみたいな顔をした僕が班長に抜擢されたことがある。
僕が2年生の時は1学級で40名くらいの児童がいて、全部で6つのクラスがあった。もっと人数の多い小学校もあるだろうが、僕らの小学校もなかなかのマンモス小学校だった。「おっちゃん、かけうどん大盛り。大至急やでぇ」のマンモスとは訳が違う。
朝礼の時には体育館に入りきらないため高学年は2階の手摺越しに朝礼に参加していたもんだ。上から顔を覗かせる上級生に対してほのかに憧れを持ったものです。僕も高学年になったら高いところから小童共を見下したい。そして新世界の神になる、などとは思ったこともありませんが、チンパンジーだったから高いところに憧れも持つのも無理もない。残念ながら小学校3年生になった時に近所に新小学校ができたため僕の小学校は真っ二つになって人数も減ったため2階から見下すことは叶わぬ夢となった。
それはさておき、チンパンジー兼班長の僕には班長としての最初の仕事をこなさねばならない。班長は全部で12名います。40名ほどのクラスだったので、クラスの4分の1が班長と言うことになります。班長の有り難味など丸でない。
男女で6名ずつ選抜された班長は、お互い3名~4名の班員を抱えた長となります。男の班長の配下には男が配置され、女の班長の配下には女が配置されます。
今考えるとウチの担任は頭がどうかしていると思うのですが、男女ペアの班を作るために班長同士でパンチ・DE・デートみたいなことをさせていました。
いや、ねるとんのほうが近いかな。選抜された12名の班長はそれぞれ自発的に相手を選ばねばなりません。そしてペアを求められた側には拒否権まであると言う民主制度を持ち合わせた優れた制度であった。
班長は相手を選ぶ時に理由まで言わねばなりません。「○○さんと一緒に班長ができたら○○が、うまくいくと思うので一緒の班になりたいです。」みたいな。
僕の目にはコイケさんしか入っていません。しかし、僕には選ぶ権利がなかった。相方を選ぶ順番ってのがあって僕は一番最後だった。
もしも、相手を選らぶ権利が与えられたとしても僕はコイケさんを指名できたか、疑問になるような大きなネックがあった。それが、相手を選ぶと同時に理由を述べねばならないところです。
現代っ子はどうだかわかりませんが、昭和な僕たちにとって好きな子に好きって言うことはとても恥かしいものでした。母親にポキールをお尻の穴に張ってもらうよりも、学校のトイレで大便を垂れ流しているのがバレてしまうことよりも恥かしいことでした。
そんな中、みんなが男女ペアになるためにねるとんを繰り広げて次々とカップルが誕生していく。コイケさんはクラスのマドンナ的存在だったのだが、僕よりも先に指名する権利を持つ男達はみんなコイケさんを指名できずにいた様子でコイケさんは可愛そうに売れ残りのような状態になっていました。みんなが何故コイケさんを指名できかったと言う理由は痛いほどよく分かる。それは「ガチ」だからに他ならない。
成立するカップルを尻目に、残る男は僕とチャチャ。チャチャとは一年生の時からの親友で、入学した時に同じ忍者ハットリくんの上履き入れを持っていたのがキッカケで、以来学校から帰っても一緒に遊ぶこともあった。気の弱いチャチャはいつも僕の後ろを着いてきた。そして僕もチンパンジーのクセにチャチャといる時は少し偉そうにしていた。チャチャはそんな僕のことを何故か慕ってくれていた。そんな仲良しコンビが最後に残った。
残った女性陣はクラスのマドンナ的な存在でみんなから好かれているコイケさん。そしてもう1人、2年生の途中から転校してきた女の子。ボンバヘッドを持った女の子。これが活発な子でそこそこ社交的であるにも関わらずイジメられるようなタイプの子で頭はいつもドリフの爆発みたいになっていた。
爆発で脳みそが飛び出していたのか知らないけど、発表の時などの声が異様にでかかった。
そんなことでライオン丸だけは勘弁な、などと思いながらもチャチャも歴戦の勇者がそうであったようにコイケさんを指名することはできまい、ライオン丸を指名するんだろう、労せず一番の手柄を挙げられる自分の強運に誇らしい気持ちになりほんのり酔いしれていた。そしてチャチャはライオン丸を選んだ理由をこう言うに違いない。「声が大きいからライオン丸さんと一緒の班になりたいです」ってなもんや三度笠。
さあ、言え。チャチャよ。「ライオン丸は声がでかいから班が組みたい」と。僕は唇の端を釣り上げ笑いが込み上げそうになるのを噛み殺す。
悪い男だ。僕がデスノートを拾ったら大変なことになる。新世界の神になることはもちろん請け合いだ。僕は悪人などを裁きはしない。僕の言うことを聞かないやつを片っ端からノートに書いてやる。月1でリサイタルを開き聞きに来ないヤツの名前も全部書く。僕が新たな歌姫として名を轟かせるのもそう遠い未来の話しでもなさそうだ。手始めにちょっと前にラジオでの発言が問題になったウンコ色の肌をした小娘の名前でも書いてやるか。なんて名前を書くんですけど、彼女の名前は芸名だったため何事もなく時間が穏やかに流れていく訳です。そして「お前の字汚いから読みにくい」と言う理由でリュークのデスノートに僕の名前を書かれて絶命するってオチなんですけど、そんな話し、今はどうでも良いことでしょうが。
チャチャの言葉に耳を疑った。チャチャの口から出た言葉は「コイケさんと一緒の班になりたいです」だった。
チャチャァァア。計ったなぁぁああ!僕がブルース・リーだったら怒りに任せて鉄拳を見舞っていたところだが、僕はブルース・リーのことをブルー・スリーだと思っていたので、その資格はない。
下克上とも取れるその言葉には勢いは感じられなかったがハッキリとした意志が聞き取れる程の芯のあるものだった。しかし、コイケさんと班を組みたい理由についてはいつまで経ってもチャチャの口から発せられない。
業を煮やした担任がチャチャに「理由は?」と訊ねる。チャチャはムーミンよろしくもじもじしながらもセガールよろしく沈黙を守ったままだ。みんな理由は分かっていた。「コイケさんが好きだからです」のはずだ。
僕の相方はボンバヘッドに決定。理由は簡単「声が大きいからです」とだけ言ってお茶を濁しておけばそれで良い。僕がコイケさんとペアになって理由を言わなければならない状況になった時のことを考えるとさっきまでドラゴンへの道を歩かせてやりたいくらい憎かったチャチャのことが哀れになり可哀想になった。
担任が執拗に理由を尋ねる。もじもじしていたチャチャはついに泣き出してしまった。そして泣きながらキレ気味に「コイケさんは声が大きいから一緒の班になりたいです」と絶叫した。一同唖然とはこのことだろう。待てよチャチャ。それは幾らなんでも理にかなっていない。コイケさんは声はでかくない。むしろ、か細い声をしているじゃないか。それでもチャチャの絶叫に圧倒されたみんなは誰もそのことに触れることができるはずもなく、教室にはチャチャのすすり泣く声だけが静かにこだまする。
さて、ここで困ったのが僕です。なんせボンバヘッドなんて声がでかい以外の取り得を見出すには、それこそ天竺を目指す旅の行程ほどの大きなスケールの考察と時間が必要になります。
天竺はごめんだ。僕はチンパンだから旅の仲間には加えてもらえる訳がない。それに僕が同行する三蔵法師は多分意地悪のような気がするから頭のワッカなんて気まぐれで締めつけられそうだ。調子に乗って度を越した三蔵法師が僕の亀の頭にワッカを取り付けるだろうから亀を締めつけられる度に痛みを覚えるものの、そのうち快感になってしまった僕はわざと締めつけられるような行いをしてしまいそうだ。その度に感じてしまうリビドーを抑える自信がない。
そんなことが頭を駆け巡り、すすり泣くチャチャを死亡遊戯の刑に処することを決意しながらもライオン丸とペアを組む理由を考えた。
ペアを組みたくない理由は山ほどあるのだが、組みたい理由はビタ一文思い浮かばない。「ライオン丸はすぐに実験に失敗してボンバヘッドになるので一緒の班になりたくありません」と言えたらどれほどスッキリしたことだろう。しかし、僕は徹底的に無難な男だったのでそんな子供チャレンジみたいなスリリングな賭けはできない。結局、無難なところで「ライオン丸は明るくて元気が良いから一緒の班になりたいです」的なことを言った。
そしてその席で数ヶ月過ごし、次の席替えの時にまたしても班長の命を仰せつかった僕はライオン丸から逆指名されるのだった。ホロ苦いスパイスだ。
そんなことで僕にとって席替えとはホロ苦い想い出が付きまとう行事となった。
さて、長々と想い出話しに華を咲かせた訳ですが、ここからが本題なんです。職場の席替えは対面に先日、登場したニューカマーがおられるのです。可愛い女の子。今日は朝からずっと緊張しっ放しでした。
ここまで読んでくれた方はうんざりしていることでしょうが、この話しも長くなりそうな上に今まで書いたものよりもくだらないことになることは必至なので、ここでのこの話しはここまで。
続きはWebで!
最近のコメント