知らぬが仏
知らぬが仏と良く言ったもので、この世の中には往々として知らないほうが良いと言うことがあるものです。
知ってしまったが最後、どっぷり浸かって抜け出せなくなってしまうことや、知ってしまったが故に失望してガッカリしてしまったと言う経験が全くないという人はいないのではないでしょうか。
前者の知ってしまったが最後抜け出せなくなる。これは身近なところにも潜んでいます。
例えば甘党の人。甘い物が好き、と言っても産まれつき甘い物が好きって人もそうそういないと思います。やはりどこかでキッカケがあったのではないでしょうか。
僕の場合は、きのこの山との出会いがキッカケです。僕は最初のきのこの山さえ食べてなければ甘い物が好きと思うことはなかったはずです。しかし、きのこの山を知ってしまったが最後、甘い物が食べたくて仕方がない時があります。僕の場合は症状は軽度ですが、重度の甘党の人はいつも手の届く範囲に甘い物がないと落ち着かないと言う人もおられるかと思います。ダイエットもしないといけないけど、甘い誘惑に負けてしまいついつい食べてしまう。
これは人間が快楽を求めてしまう性を持っている限り避けられない問題なのかも知れません。
そして、後者の知ってしまったが故にガッカリ。これも案外身近なところに潜んでいるものです。
最近、街で探偵社の看板を目にすることが多くなりました。探偵社と聞くと工藤ちゃんみたいなハードボイルド崩れの仕事を思い浮かべるのですが、その実態は浮気調査などがメインの仕事になるようで看板の売り文句も「浮気調査承ります」的なことが書かれています。
結婚相手や交際相手の浮気を調査するために探偵社に駆け込む人の需要が多いのでしょう。そもそも浮気調査を依頼するってことは、うすうす勘付いているのでしょうが、それを白日の下に晒したいと思われている方がするのでしょうが、実際に浮気をしていることの証拠が突きつけられた依頼人は少なからず失望しガッカリするのではないでしょうか。
これは人間が好奇心や探究心と言った欲求を持っている限り避けられない問題なのかも知れません。
「知らぬが仏」の場面は案外、日常のあちこちに散りばめられているように思います。
その「知らぬが仏」の問題は僕の身にも降り掛かる。
さて、僕は3階建てのモダンな造りのアパートメントスタイルの1階部分に住んでおります。今の住居に引っ越してきて1年とちょっとが過ぎました。角部屋のため隣接する部屋は隣と上の階の部屋だけです。
僕がこの部屋に引っ越してきて一番良かったと思えるところは静かなところでした。隣の住人は生きているのか死んでいるのか分からないくらい静かです。一度だけ廊下でバッタリと出くわしたことがあるのですが、学生を思わせるような風貌とラーメン大好き小池さんみたい雰囲気を兼ね備えた青年でした。そしてその堂々とした挙動不審な態度は科学の教授でもやってそうな感じでしたよ。たまに夜中にゴソゴソしている時があるのですが、何か実験でもやってんだろう。
そして、僕が引っ越した当初は上階の部屋は空き部屋だったようで、当然物音はしません。減量中のボクサーは水道から滴る水の音がハッキリと聞き取れると言います。そしてその音が脳裏に染み付いて実際には水道から水が滴っていない時に、水が滴る音の幻聴が聞こえノイローゼになってしまうことがあるそうです。僕は減量もしてないしボクサーでもないけど音に対しては人一倍敏感で神経質なので今の部屋の静けさは快適で理想の居住空間でした。
去年の秋頃のことだと思いますが、そんな僕の快適ライフを脅かす存在が現れました。とうとう空き部屋だった上階に住居人がやってきたのです。上階は男性の1人暮らしのようで足音が聞こえてきます。そしてその足音は非常に大きな足をしている印象を受ける音です。しかも臭そう。ヒバゴンの名に恥じぬ足音です。ジャイアント馬場でさえ実際は14文しかなかったと言うのに上階のヒバゴンは16文どころの騒ぎではない。
そして、ヒバゴンには彼女がいます。ヒバ子です。これが週末になる度に上階に訪れてサルのようにニャンニャンするもんだから堪ったもんじゃない。サッコルばっかしてるんですよ。いやぁ。これがですね。ヒバ子の声が半端じゃないんですよ。初めて聞いたときはヒバゴンがとんでもないDV男で彼女であるヒバ子を16文で殴る蹴るの暴行を加えているのかと思いました文。しかし、実際は16文のチンコでヒバ子を悲鳴をあげさせてたんですけどね。
そんなのを毎週聞かされたら僕だって悶々する文。ってなことですよ。
まぁ、僕としては想像力が鍛えられるので良い訳なのですが、僕の隣の部屋の教授の実験の邪魔になっていないかだけが気がかりです。
それで、ですね。そのうち週末になると僕も上階で事がおっぱじまるのを心待ちにしちゃったりなんかしてね、週末の楽しみになってしまってたんですよ。ヒバ子が訊ねて来た時は夜に一回、朝に一回と市販の風邪薬みたいな勢いで「夜と朝だけ飲めば効く」みたいな状態でハッスルですよ。そしてその度にヒバ子が、アパッチの雄叫びですよ。「ウララー」ってなもんでしょうが。
普通は他人のサッコルの時の声なんてAVなんかでしか聞くことがないでしょう。それがですね、上階から聞こえる訳ですよ。しかもAVなんかよりもデッカイ声です。なんせアパッチだから。そりゃあ、僕かて興味津々になってまいますよ。僕が殿だったら「ほぉぅ。絶叫するオナゴとな。一目見てみたいもんじゃ。連れて参れ。」とでも言うに決まってますよ。
もうね、僕はあの絶叫ヒバ子がどんなオナゴなのかが気になって仕方がない。殿じゃないけど見てみたい。隙あらば入れてみたい。―――などと思ってないことにしましょうよ。
しかし、この好奇心には複雑な思いもあるのです。毎週、上階でまことしやかに行われている行為を聞き耳を立てて聞いているぶんには想像力とかチンコが膨らむのですが、これはヒバ子がどんなオナゴかを知らないから成せる業なのかも知れません。どんなオナゴかを知ってしまうと想像力が半減してしまうかも知れません。
僕の想像の中のヒバ子は山田優がF1のキャスターやってる時にドライバーとゴニョゴニョした関係になってドライバーのチンコでシフトチェンジしたりですね、馬乗りになってロデオみたいに腰をグリングリンさせてですね、それこそピットイン、ピットアウトを繰り返してですよ、次々とドライバーを虜にする訳ですよ。山田の父は難病を患っており、その治療費を稼ぐために芸能界入りを果したんですけど、その稼ぎでは治療費を賄うことができず、ドライバー達に体を委ねることと引き換えに大金を得ていたのです。ある男の引き合いでアラブの石油王の愛人になり、そのお陰で父の治療費の心配はなくなったのですが、F1キャスターとしてヨーロッパ諸国を渡り歩いているうちに暗殺者になってしまって数々の暗殺に手を染める訳です。そして新たな暗殺依頼がくるのですが、それは山田の父の恩人であるアラブの石油王を消す依頼だったのです。山田の気持ちは激しく揺れ動く。しかし、この世界に身を置くヒットマンとしては私情を挟むことは許されない。山田は決意し、石油王を暗殺することになるのです。山田はこの暗殺の依頼人を突き止めようと躍起になるのです。それはヒットマンとしては御法度の行為なのですが、山田にはこの依頼人を突き止めることに命を懸けます。幾多の苦難を乗り越えた山田は暗殺の黒幕に辿り着くことができます。運命の悪戯と言いましょうか暗殺の依頼人はあろうことか山田の父だったのです。「知らぬが仏」とはまさにこのことだ。さぁ、どうする、山田。
僕の想像の中のヒバ子はそんな感じのイメージの娘なんです。いや、嘘だけど。まぁ、いろいろ想像するってこった。
そう言った訳で絶叫ヒバ子がどんなオナゴかを知ることよりも想像の域にいてもらうほうが僕にとっての幸せなのだろう、と思ってたりした訳ですよ。
そして、今日、チーと一緒に僕の家に帰宅した時のことですよ。丁度時を同じくして、あるカップルが僕と同じ建物内に入ろうとしている。人のことをとやかく言える容姿はしてないのですが、ちょっと冴えない男と田舎者が背伸びしてみました的な女でした。手を繋いでおられましたよ。
何やらスーパーの買い物袋などを持っていたので、今からご飯でも作って食べるのでしょう。そしてその後はアウトインを繰り返すのでしょう。そんなことを考えながらカップルの後に続くように建物内に入ります。先に入ったカップルは上階の住人のようで階段を上っていきました。
僕とチーは僕の部屋に入り、下駄箱で靴を脱いでいました。そうするとですね、僕の部屋の上の階の部屋からも音がします。恐らく僕たちと同じように靴を脱ぐ作業をしているであろう音が聞こえます。僕とチーは顔を見合わせて互いに目で語り合った。「やつらがヒバゴンとヒバ子!」
ついに見てしまった。16文ヒバゴンと絶叫ヒバ子を。
ヒバゴンなんて全然大きくなかったし16文ところか1文の得にもならないような冴えない男だった。ヒバ子なんてヒットマンでもないし乳首も真っ黒みたいな顔してたよ。
僕の想像力が絶たれた。これからはあの絶叫を聞くたび小さなヒバゴンと乳首真っ黒のヒバ子の顔が思い浮かんでしまう。
僕は上階の住人を知ってしまったことによりガッカリする結果になってしまった。まさに「知らぬが仏」だ。
上階のカップルは今日も夕飯後にサッコルしたのでしょう。そしてまた乳首真っ黒の絶叫が響いたことでしょう。
サッコルを知ってしまったが最後、どっぷり浸かって抜け出せなくなった2人にとって「知らぬが仏」だったかを知る術はない。


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投稿: みんな の プロフィール | 2008年4月21日 (月) 15時54分